20170708_ひとりとひとりだ

『blackbird books 3周年記念トークイベント「夏葉社が読んできたもの 聴いてきたもの」
詩集と『めいめい』でお世話になっているblackbird booksさんにて。
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「自分にしかわからないだろう」
そう、書き手のことと、読み手である唯一の自分のことを強く信じられる力が小説の力なのだと
島田さんが話しておられた。
脇目もふらずにひとりで言葉に取り組むことと、
臆することなくひとりで読み、言葉から体得すること。
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私は、詩のことを思っていました。
詩を読むときはひとりだ。
詩を書くときもひとりだ。
詩を介してひとりとひとりで出会っているのだと
書き続けて、本を作って、人に会えば会うほどそう思う。
夏葉社のたったひとりとしての島田さんに出会えてよかった。
そんな島田さんの帰路に『発光』を連れていってもらえて、
なんて光栄なことだろう。ありがとうございます。
私は西荻窪FALLの三品さんの著書をようやく買えました。うれしい。
読み出しからもう三品さんの音楽と同じ匂いがしたような気がして、
にきにぎと言葉を噛みたくなったのでした。
あとは村上春樹の『女のいない男たち』を。
二人のお話を聞いていて、村上春樹を読んだ記憶が遠いことに悔しくなったので。
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新しい詩集『ほとり』を店主吉川さんに読んでいただく。
ほんとうにただ読んでほしくてうろうろ持ち歩いている。
(詩集をそんな風に扱っちゃいけないのかもしれないけど)
「突っ込んだことを聞くようですが」
「はい」
「恋をしていらっしゃるのですか、」
ひとしきり笑ったりしたあと、言葉の前で立ちすくんでいた幸せな時間を思い出して、ひと掴みを返した。
「恋じゃないけれど、ひとを思いながら書くことはあります」
ひとりで書いたものの中にあるだれかの気配。
つくづく、彼や彼女からもらっているのだと、まさかそんなことまでは言えなかった。
恋。
その言葉を浮かべたあとに読んでみたら、
水面がちょっと澄んだ気がした。気のせいかもしれない。
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「本当に他人を見たいと望むのなら、自分自身を深くまっすぐ見つめるしかないんです。僕はそう思います」

『女のいない男たち』
(「ドライブ・マイ・カー」)
村上春樹著

本と音楽をもっと頼っていいのだと、昨日の帰り道思っていた。
正しく読めない/聴けないことがもうずっと恐ろしくて恥ずかしかったけれど、
トライアンドエラーしてみてもいいだろうか。
言葉にしても、いいだろうか。